陶器が生産されていく過程の中でデパートのディスプレイに並んだり、お客さんの手元に届くまでには色な工程を重ねていきます。その工程の中で出てくる”B級品”をここでは取り上げようと思います。産地では 一般に「ペケ」と呼んでいます。おもに選別の過程や成型される過程で生まれるこの「ペケ」について産地の言葉で簡単ですが紹介します。このB級品や不良品を専門で扱っている「ペケ屋さん」と呼ばれる卸屋さんも産地には何軒もあります。窯で使ういろいろな道具の写真とともに紹介します。 |
「ツク」・・板を組む足 | 「ピン」・・皿をかう足 | 「サシ」・・皿を差すはしご |
「ペケ」と言われる産地の言葉(呼び方)
言葉(呼び方) | 簡単な説明・原因 |
切れ | お皿やカップのおもに渕の部分にできるヒビで表面上でなく陶器自体が切れた状態のものを言います。原因は色々ですが作りの時の乾燥の状態や無理に大きなものを作ったり、変形した形状を作るときに出来やすい。B級品ではなく不良品である。 |
鉄粉(テップン) | 陶器を作る前の陶土を作るときや釉薬を施す際に混ざった鉄分や成分以外の混入物によりできる「ほくろ」のようなもの。その大きさは大小があります。人間のほくろと違って生まれつきではありません。原因は製法上の理由というよりむしろ製土上の理由と工場の環境の問題もあるといえる。汚い工場では不純物が混ざりやすい。これはB級品として100均などで市場に出て行きます。 |
ボロ(ボロふり) | 窯で本焼きするときにできるもので、皿を入れて焼く「さや」(えんごろ)や組んで焼く「棚板」のチップなどが製品についてできるものを言います。窯に製品を積んだ台車が入っていく時の揺れなども原因の一部ですが、「さや」や「棚板」の磨耗(使いすぎ)が第一の原因と思われます。しかしこの「ボロ」は「リューター」という物で削り取ってB級品として安く市場に出回ります。 |
ヨイ(酔っ払い) | 同じ窯の中でも場所によって温度が違ってきます。また季節などより製品の微妙に乾燥状態も違ってきます。この「焼むら」によってできると考えられています。文字通り飲んで色の変わる「酔っ払い」です。人間はほとんど赤くなりますが、白い製品の場合一部分が割りに広い範囲ではくすんだねずみ色になります。これも大胆な絵柄を上から貼り付けてB級品として市場に出回ります。 |
じわ | 素焼きと釉薬の相性が合わなかったり、窯の温度が上がらずに釉薬の溶けが悪かったりしておきる表面上の欠点です。表面がA級品を「ツルツル」と表現するならこれは「じわじわ」といったところです。一見するとわかりにくいのですが、見る角度や光線の当たり具合で小さな点が全面に広がっています。色は違いますがみかんの表面のような感じです。これまたB級品として扱われます。 |
ニュウ(入) | 表面上の釉薬のヒビのことを言います。ガラス細工やわざとヒビを入れる「貫入」(かんにゅう)という製法がありますが、この「貫入」の文字から「ニュウ」と呼んでいると思います。素焼きの状態で釉薬との相性でできるといわれています。長く使用するとこのヒビから水分がしみこみ、割れやすくなりため「不良品」とし処分されます |
窓 | 釉薬を施す製釉機で塗られて製品にはおきませんが、機械にかからない形の製品は人の手で1枚1枚釉薬が塗られます。このとき一部釉薬がかからない部分ができてしまうことがあります。この無釉薬の部分ちょうど「窓」ができたようになることからこんな言い方をすると思います。もちろん家の窓と同じ用ように色々な形の窓ができます。ほとんどが人的なミスからできるB級品です。 |
底舞い (底上がり) |
皿の平らな底の部分が盛り上がっていたり(底上がり)下がっていたり(底舞い)していることを言います。皿の肉厚や全体の土の肉付けの問題からおきるとされています。底舞いの商品をテーブルに置くとくるくると回ることから、底舞いと呼ばれています。またレストランやお店で収納で積んでおくとガタガタ揺れる原因になります。2,3枚積んでみると綺麗に舞って回ります。お店のイメージを左右するので十分に検品をします。 |
ひずみ | 作りの問題でおこり、ほとんどが土の厚みの問題で、1枚の皿で薄い部分と厚い部分の差が大きいとおこりやすい。また成型段階で土へのプレスが弱いと本焼成の時にひずみやすくなる。この土へのプレス加減を十分プレスした状態を「土が死ぬ」プレスが弱い状態を「土が死んでない」とか言います。型から抜く時におきるものを「抜きひずみ」と言います。またコーヒー碗やブリオンなど手やハンドルの付いた商品は本焼成の時に本体をハンドルが引っ張ることになるのでひずみやすくなる。やはりこの場合もカップ側の肉付けの問題で解決できます。歪んだコーヒーカップはよく見ると楕円形になっている。この他色々な部品のついた商品(つまみ、ポットの注ぎ口など)や変形物は形状自体が歪みやすくなっています。また余り高温で焼き過ぎてもおきるようです。焼成時の土の縮み具合がかなり影響します。 |
かけ (塗りかけ) |
これは文字通りのかけ、チップです。出荷や運搬の時に出る不良品です。しかし素焼きの時にチップした製品に釉薬をかけた「塗りかけ」は、その部分によってはB級品として出回ります。特に裏側のそこの糸底の部分(はま)の塗りかけ(はまかけ)は、見た目わかり難い点と釉薬がかかっているので、人が持ってもけがをしない点から安く市場に出ます。 |
ダリ(ダレ) | 濃い釉薬や色ものの製品を作るときにできる表面的な色むらのことを言います。白い陶器は釉薬自体は透明釉薬ですので、実際には釉薬が部分部分でむらがあっても見た目わかりません。これ自体はその製品でも大なり小なりあります。しかし色釉薬、特にパステル調などの淡い色合いの釉薬におきやすく、色むらが気になります。特にボールや碗などの深いものの底のお部分におきやすく、どこまでが良品か不良品かは値段や出荷先、ブランドなどで決まってきます。 |
仕上げが悪い (バリ) |
製品が焼きあがる前の工程の半製品(なま*成型したばかりの状態)や素焼きの状態で、おもに表面でも渕の部分がスポンジなどで水拭きが足りなかったりしてできるものです。ちょうど成型したては鯛焼きのうどん粉のはみ出した部分(バリ)を綺麗に取るようなものです。しっかり水拭きしてないと渕が尖った感じになり、絵付けの金線なども引き難くなります。「仕上げが悪い」と言っています。 |
ピンホール | 陶器の表面にできる文字通りの針でつついたほどの穴のことである。いくら小さな穴でも「ぽつん」とあいているとかなり目立つ。これも釉薬と土の関係でできる。上に紹介した「ジワ」の大きなものである。このピンホールは使っていく間に汚れがたまり、黒くなっていくのであとから目立っていく。これもB級品として安く市場に出荷されていく。 |